「母子密着」、この言葉ほど、罪な言葉はないと思っています。
なぜなら、「母子密着」という言葉が「母子密着」を作ってしまうといえるからです。
みなさんは、母子密着と聞くと、どのような感じを受けますか?
以前、私は、母子密着が、具体的に分からないのに、何となく「悪いことなんだろう」という印象を受けていました。
たぶん、みなさんも、ネガティブな雰囲気を感じるだろうと思います。
母子密着という言葉の始まり
私が子供の頃に、話題になったことがあります。
成績優秀で東大に進学したものの
例えば、「ママ、パジャマのボタンとめて」とかいうように
勉強以外は、自分では何も出来ない人がいるらしい・・・
これは、都市伝説的な話だったのかもしれませんが、そのような状態になる原因が母子密着にあると言っていたような気がします。
また、他にも、子供や青少年がニュースになるような問題を起こすと、テレビで評論家たちは、母子関係に少しでも問題がありそうなら、「母子密着が問題だ」と、頻繁に言っていたような記憶があります。
(今でも、そんなところは、あるような気がします。)
このように、母子密着という言葉は、もともと問題を指摘するために作られたものですから、ネガティブな印象を感じるのは当然かもしれません。
でも、もっと、正確に言うと、「何らかの問題に対して、『母子密着という原因がある』と考えた人がいた」というだけで、それがことの本質を捉えているかどうかは不明なままなのです。
しかし、今では、「ある問題に対する仮説のひとつ」であったはずの母子密着という考えが、まるで実在する問題であるかのように広まっています。
子育てのポイント
子育てのポイントとして、「子育てでは、母子密着に陥ってはいけない」と信じている人も多いように思います。
現代社会は、母子密着という言葉による混乱が生じています。
このような世間の雰囲気に流されて、「母子密着に陥らないための子育て」に取り組み始めてしまうと余計なことが気になるようになります。
- お乳は何時頃までにやめた方がいいのか?
- 抱き癖をつけないようにしなければならないのか?
- わがままを言って泣いている子は、無視したり説得したりして、抱き上げずに我慢させる方が良いのか?
- 幼稚園に行きたがらないのは、母子密着になっているから?
- 添い寝をする(寝かしつける)のは、何歳くらいまでならしてもいいの?
- 小学生になったら、夜は一人で寝られる習慣を身に付けさた方が良いの?
- 強い子にするために、泣いている子は放っておく方が良いの?
他にも、いっぱいあると思います。
いちいち、そのようなことを考えて実践しようとしていたら、気持ちがいっぱいいっぱいになって、やっていられなくなります。
こういった類のことを、あまり真剣に考える必要はありません。
次のことを信じていれば良いと思います。
- 人は、足れば要らなくなる。
- 人は、足りなければ、いつまでもそれを欲し続ける(俗に言う「固着」)
【参考】
結局、母子密着って?
- 母子密着は、どのような問題の原因なのか?
- 母子密着とは、具体的にはどのようなことなのか?
- 母子が密着することの何が悪いのか?
- 母子密着が原因ではなく、それ自体が問題だとしたら、母子密着に陥る原因は何か?
このあたりのことは、さっぱり分からないのが現状だと思います。
余談ですが・・・
母子密着という言葉から、お母さんばかりに責任がありそうな印象を受けてしまいますが、父子密着や親子密着という言葉があっても良さそうなものです。
今の日本の社会では、父親は働きに出るので家庭に不在がちです。そのため、母子密着の方が広まってしまったのでしょう。
話を戻します。
この母子(父子/親子)密着は、子育ての過程にある問題ではありません。
子育ての結果として、凡そ思春期以降に陥る状態です。
別の言葉を用いると、「子供が自立できない親子関係」、と言えます。
これが、母子(父子/親子)密着の本質です。
自立
安心感を身に付けている
親に子供を安心させられず、逆に、不安を生じさせる傾向があるとき、子供は「親から受ける不安と未知の世界から受ける不安のどちらかを選ばなければならない葛藤状態に陥ります。
未知の不安より、既知の不安の方が安心だということは何となくわかると思います。
そして、不安を与える親から離れられなくなってしまいます。
【参考】
自分だけで行動のサイクル(感覚じる -> 思考する -> 行動する)を回すことができる
親が、子供の感覚や考えや行動を否定して、親の思うようにすることを要求してばかりいると、子供に次のような習慣が身について、自分だけでは行動できなくなってしまいます。
- 行動のサイクルの中に「親のチェック」というステップを組み込む
- 自分の感覚を放棄し、親の感覚で代用する
- 自分の思考を放棄し、親の思考を代用する
- 自分で行動することを放棄し、親の好きに行動させる
ですから、「自分一人でできるように、子供のすることに、あれこれ口出しする」というありがちな対応は、逆効果だということが言えるのです。
【参考】
子供が、自分で考えてしたことで失敗したとき、それを叱ったり、厳しく指導したりするのは、上の両方の意味を持ちます。
最後に
いろいろ書きましたが、母子密着という言葉を気にしていると、逆に、子供の自立を妨げてしまうということがお分り頂けましたでしょうか。
(1)泣いていたら抱き上げる/抱きしめる
(2)「寝かせて」ってお願いしてくるうちは寝かせてあげる
(3)「抱っこして」って言ったら、抱っこしてあげる
「足りれば要らなくなる」
我が家の上の子は4年生になるまで、毎日「寝かせてほしい」と言っていました。
生まれてから、ほぼ毎日、欠かさずに寝かせ続けました。
「足りれば要らなくなる」を信じて・・・
今は、5年生。
最近は「寝かしたろか?」と尋ねると、「寝れるから向こうへ行って」ですって。
「抱っこして」とも言わなくなりました。
- 「足りれば要らなくなる」
- 「十分に与えれば、子供の方から、自然に関係を切ってくれる」
ということだと思います。
ただ、つらそうにしているときは、こちらから抱きしめるようにしています。
次のような言い方もできます。
お願いしても、させてもらえない時が来ます。
だから、それまでは、
- 抱っこさせてもらえるうちは、抱っこさせてもらっておけばいい
- 子守唄歌わせてもらえるうちは、歌っておけばいい
- 頭を撫ぜさせてもらえるうちは、撫ぜさせてもらっておけばいい
母子密着という言葉に惑わされて、子供との関係を、親から切っていく必要はないのです。
おまけ
次のページの内容は、「母子密着」という言葉が「母子密着」を作るように、『「わがまま」という解釈が、子供をわがままにしてしまう』という内容になっています。
もしよろしければどうぞ!
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