10. 感情に関する誤解から引き起こされること
読むカウンセリング【No.0009】 2006/07/29
感情に関する誤解から引き起こされること
何か理解しがたい事件が起こったとき、何気なく「最近は、訳の分からない事件が増えてきた」というように、「最近は以前と変わってきた」というニュアンスで理解することが多いような気がします。
しかし、10年前も、20年前も、そのずっと以前からも、理解できないことは、この『最近』ということのせいにして、問題の本質について考える事を避けてきたのかもしれないという気がしています。
ストーカー犯罪が起こったり、子供が親を殺したり、親が子供を虐待したり、自殺者が毎年3万人を越えるといった、安心とは程遠い雰囲気が広がっていく背景について、私なりに考えたことを書いてみたいと思います。
1.現代人のパターン
現代の人々は、多くの場合、次のパターンで行動しているだろうと思います。
(1)出来事が起こる
(2)出来事を客観的に評価する
(3)客観的評価に基づき、出来事の問題点やその原因を探す
(4)問題や原因を解決する
この流れは『PLAN DO CHECK ACTION』というように、仕事を進めたり、現状を改善していく為の基本的な考え方として認識されていることが多く、ビジネスライクな問題解決には有効です。
しかし、私たちが生きていくには、このような考え方だけでは対処できない事態が沢山起こります。
そこで、私たちが、自分らしく生きていくためには、まず、(2)の部分を修正する必要があると考えているのですが、何だか分かりますか?
2.「生きる」とは感じること
「生きる」ということの本質は「感じること」ではないかと思っています。
【例】
- 褒められれば嬉しい
- けなされれば悔しい
- 別れは悲しい
- 出会いは嬉しい
- 失敗すればつらい
これは、すごく当たり前のことのように思えるかもしれませんが、これを本当の意味で理解している人は少ないように感じています。
これらの例のように、私たちは生きている限り、自分に生じる様々な感情からは決して逃げることはできません。
つまり、前の問いかけの答えとして「(2)主観的に感じる」ということを据えなければならないと思うのです。
どんなに感じないように頑張ってみても、必然的に感じてしまいます。
ですから、それがどんな感情であっても、あたりまえに生じる感情を否定してしまえば、身動きが取れなくなってしまうのです。
感情を否定する事で陥ってしまいがちな状況の例は、「4.ほとんどの過ちは、こうしてはじまる」で説明させて頂きます。
【補足】
念のために補足しておきますが、『怒り』というのは、感情ではないのかもしれないと思っています。
■ 感情を否定しようとした結果、『怒っている』という状態になる
簡単に説明すると、このような側面が強いのだろうと思うのですが、違う側面もありそうなので、詳細は、もう少し考えて、別途、まとめてみたいと思います。
素直に書くと、「怒りも我慢せずに出せ」と言っているのではないということを注釈したくて、補足させて頂きました。
3.どんなにつらくても、感情は必ず癒される
「1.現代人のパターン」で記述したパターンを単純化すると
■ 出来事が起こる –> 出来事に対処する
というようになります。
【例】
- 車が壊れる –> 修理する
- 成績が下がる–> もっと勉強する
「修理する」というように、容易に実現可能であったりすると、そのような対応で乗り越えられるかもしれません。
また、「もっと勉強する」というように、「それをすれば、何とかなるかもしれない」と感じていられることがあると、たとえ事態が改善しなくても、気持ちが救われるところがあります。
しかし、そのような対処方法を身に付けてしまうと、例えば、「大切な人との死別」というようなリカバリー不能な出来事に遭遇した時、何をどのように対処したら良いのかが分からなくなってしまいます。
そうならない為には、「出来事が起こったときに対処すべき対象」の認識を、改める必要があると考えています。
それを明確化するために、「人は何かを感じる」という大前提を盛り込む必要があるのです。それを盛り込むと、対処の対象が変わってきます。
■ 出来事が起こる –> 感じる –> 生じた感情に対処する
生じた感情に対処するとは、自分に生じたあらゆる感情(つらい気持ち、悲しい気持ち、喜びの気持ちでさえも)を癒すということです。
「癒す」というと少し分かり難いのですが、その方法は実に簡単です。
自分に生じた感情をきちんと表現し、それを誰かに、ただ、「そうだね・・・、そうだね・・・」と、聴いてもらってみて下さい。
自分の気持ちが、だんだん楽になっていくことを実感できると思います。
そして、今までこだわっていた原因や、目の前の出来事の解決方法なんか、次の次で良いということを、きっと、体や心で感じられるだろうと思います。
4.ほとんどの過ちは、こうしてはじまる
どんな感情も、きっと癒されると考えています。
しかし、不幸にしてこれまでに「感情が癒された」という経験が少ないと、
■『自分の感情以外のこと』に対処する事でしか、自分の感情は解決できない
と考えてしまいがちになるところがあるのだろうと思います。
例えば、苦しいと感じているとき、「苦しさは癒されない」と考えていると、
- 苦しさの原因を解決する
- 苦しさを感じないようにする
- 別の良い事でつじつまを合わせようとする(帳消しにしようとする)
- 苦しさの原因と考えた事を、これから先、避けようとする
などといったことに意識が向いてしまいます。
その結果、次のような状態に陥ってしまうのだろうと考えています。
【例】
○失恋が苦しさの原因だと考えれば、その苦しさから逃れる為には、失恋をなかったことにするしかなくなります。つまり、「恋人になる」、或いは、「恋人に戻る」ということです。その目的を果たす為の行動は、苦しさの中で行われるので、相手の気持ちを思いやるゆとりがないだろうということは予測がつくのではないでしょうか。その結果、一方的に自分だけの思いを押し付けるような状態に陥ってしまうのではないかと考えています。
○相手の存在を苦しみの原因と考えれば、相手を排除したり、相手の存在を無くすしかないと思ってしまうことがあるかもしれません。
○苦しく感じるのは自分の心に問題があるからだと考えれば、そう感じるのは自分が弱いからだと心にムチ打ってますます苦しくなったり、苦しさを感じなくするために自分の存在を無くしてしまうしかないと思ってしまうこともあるかもしれません。
このように考えてみると、今の社会で起きている色々な状況を、理解することができるような気がするのです。
まとめると、色々な不幸な出来事は、
■心の苦しみ
■感情が癒されるという事実を知らない ★
という2つの要素が重なり合ったところから始まっているのかもしれないということです。
ですから、今の時代に、最も必要な事は、
■全ての感情を認め、それぞれの感情に適した癒しを与えていこうとすることなのではないかと思います。
5.最後に
・将来のあなたが、あなたの愛する人やあなた自身を傷つけない為に、
・そして、あなたの子供たちに苦しい人生を歩ませない為に、
■『苦しい時は、苦しさを表現し、それを受けとめてもらえば心は癒される』
ということを、まず、知っておいて下さい。
そして、その為に、
■「そうだねそうだね」と言ってもらいながら癒してもらうこと
を実践してみませんか?
あなたの心が癒された後は、
■「そうだねそうだね」と言って、他の誰かを癒してあげること
も実践してみませんか?
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