20. 『我慢すること』と『話すこと』
読むカウンセリング【No.0019】 2009/07/05
『我慢すること』と『話すこと』
まず、初めに『悩み』について、簡単に説明します。
人は、『本当の気持ち』を話さないでいると、心が苦しいと感じる状態に陥ってしまいます。
そして、その苦しさを解決するために、「これが原因だ!」と意識したことを解決しようとあれこれと考えているのが『悩む』という状態です。
ですから、『悩み』を解決するためには、意識している課題を解決する前に、心の苦しさを解決する方が近道な場合がほとんどです。
(このあたりのことは、拙著『あなたにもある心を回復する機能』で説明していますので、興味のある方は、お読み下さい。)
そして、その近道が、悩みの原因となった『本当の気持ちを誰にも話さない』という習慣から解放され、『本当の気持ちを誰かに話す』という習慣を身につけることなのです。
今回のメルマガでは、この『我慢すること』と『話すこと』に関連したことを考えてみたいと思います。
1.『北風と太陽』
『北風と太陽』という童話があります。
太陽と北風が、「どちらが旅人のマントを脱がすことができるか?」という勝負をするお話です。簡単に内容を書くと次のような感じです。
北風は寒い北風をビュービュー吹かせてマントをはぎ取ろうとしましたが、旅人はますますマントでしっかりと体を包みこんでしまいます。
次に、太陽がポカポカ温かい日差しを注ぐと、旅人は自分からマントを脱ぎました。
この童話は、あることを実現するための方法は、最低でも『陰の方法』と『陽の方法』の2通りはあることを伝えようとしていると理解しています。
(1)『陰の対処』とは、相手を強制して自分の思い通りにさせようとする方法
(2)『陽の対処』とは、相手に「~~したい」という自然な気持ちを生じさせ、行動を起こさせる方法
2.言葉の分類
この童話を参考にすると、言葉にも『陰の言葉』と『陽の言葉』があると考えることができます。
人が我慢という状態に陥っているとき、何を我慢しているのでしょうか?
普通は、自分にとって不都合のある状態のまま耐えることを『我慢』と認識すると思います。
そこを、更にもう一歩踏み込んで考えてみると、「頭に浮かべた言葉を口にすることを我慢している」と理解できると考えています。
この時、『陰の言葉』を思い浮かべていることが多いのです。
3.陰の言葉の働き
『陰の言葉』を頭にイメージしているときは、
- これを言ったら相手は嫌がるんじゃないか
- これを言ったら相手を傷つけるんじゃないか
などと想像するので、それを口にしないように『我慢』しようとする心理が働くのは自然なことと言えます。
多くの場合、そんな想像は、的を得ているので、口にしないのも一つの対処なのですが、そのままに言わずに我慢していると、我慢しようとするパワーが蓄積されて、苦しさが次第に増してきます。
やがて、蓄積されたパワーが限界に達すると、結局は、普通では言い難いような『陰の言葉』を、強烈なパワーを伴って口にしてしまうのです。そして、「相手を傷つけたくない」、「相手に嫌な思いをさせたくない」という思いとは裏腹に、当初の心配が現実のものとなってしまいます。
そこで、自己嫌悪になって反省し、「そのようなことは言わない」と決意しても、意識している言葉が『陰の言葉』である限り、我慢は蓄積され爆発するという繰り返しから逃れられません。
このように、『陰の言葉』が、我慢せざるを得ない状況を作り出し、自他の心を苦しめてしまいます。これが『陰の言葉』自体が持つ働きです。
4.気持ちを言葉にする方法
(1) 陽の言葉
『陽の言葉』というと、自分が考える行動を相手に起こさせる為に、相手を褒めたりおだてたりするような言葉を思い浮かべるかもしれません。
しかし、そのような言葉は、自分の本当の気持ちを隠して使われることが多い言葉なので、我慢の状態に陥り易いところがあります。
そして、いつまでも思い通りにならなければ、気持ちを爆発させてしまうことにつながることがあります。
そこで、注目すべきは、俗に『I(アイ)・メッセージ』と呼ばれている表現方法です。「I(私)」を主語にして自分の気持ちを話す習慣を身につけるとコミュニケーションが良くなると言われています。
例えば、誰かから嫌なことを言われた時に、「そんなことを言うあなたはひどい人だ!」とか「謝れ!」などと言うのではなく、「あなたにそう言われて、私は悲しい気持ちになった」というように自分の感情を表現します。
相手に何かを要求しなくても、自分の感情や感覚を言葉にするだけで、結構、気持ちが楽になります。
また、自分の正直な気持ちを知らせると、相手の気持ちは動きます。
ですから、相手に何かを要求しなくても、自分の気持ちを話すだけで、相手は『自分からコートを脱ごうとする』のと同義の行動を起こしてくれる確率は高まるところがあるのです。
【補足】
ただ、これだけでは、考えて行動するというステップを相手にゆだねてしまうことになるので、幼児的な反応になってしまいます。
可能であれば、加えて、自分がして欲しいこと(望み)を相手に伝えてみる(依頼)と良いでしょう。
相手に正直な気持ちを伝えても受けとめてもらえなかったときは、それ以降『我慢』の状態に陥ってしまいがちですが、そんな時でも、話す相手を変えてみると、自分の気持ちを話し受けとめてもらえる可能性が生まれてきます。
関係者よりも、その場に利害関係の無い人に話す方が、聴いてもらいやすいところがあります。
(2) 陽の表現
例えば、子供が騒いでうるさいときに、「うえぇ~ん、静かにして欲しいの~~~っ」と笑って言いながら寝転がって手足をバタバタさせて泣き真似をしてみます。
やってみると分かると思うのですが、この方法は、自分の気持ちを表現することを我慢していないので、苦しい気持ちにはなりません。
むしろ、やればやるほど、気持ちが楽になっていきます。
また、子供も「静かにしない自分は悪い子供だ」といった強いメッセージを受けないので、追い詰められなくて済みます。
しかし、「おとうさんが、また、馬鹿になってしまった!」とキャッキャと喜んで、思い通りに行動してくれることは多いです。
相手が大人である場合、これと同じことはできませんが、相手を責めずに自分の素直な気持ちを表現できる方法は、探せばきっと見つかるのだろうと思います。
6.まとめ
今回のメルマガの目的は、『陽の言葉』や『アイ・メッセージ』を推奨することではありません。
また、『陰の言葉』が絶対にいけないと主張しているわけでもありません。
■自分の気持ちを話さなければ心は苦しくなる
■『適切な言葉』、『適切な相手』を見つけられたら、誰も傷つけることなく、自分の気持ちを話すことが出来る
■自分の気持ちを話せば心は楽になる
ということを知ってい頂きたいと思って今回のテーマを取り上げました。
ですから、最善の対処や言葉を使わなければならないと、自分自身を縛ることの無いようにして下さい。
もし、『我慢』という状態に陥りそうになった時には、こんな考え方もあるということを思い出して頂ければ幸いに思います。
最近、ピュアハート・カウンセリングのホームページがGoogleの検索結果にほとんど全く表示されなくなってしまいました。とほほほっ・・・(涙)
メルマガ編集後記【No.0019】
メルマガを【『我慢すること』と『話すこと』】発行しました。
メルマガを配信した後で、メルマガの導入の説明がちょっと変だったことに気がつきました。 あんまり重要なことではないのですが、一応訂正させて下さい。
【訂正前】
今回のメルマガでは、この『我慢すること』と『話すこと』に関連したことを考えてみたいと思います。
【訂正後】
今回のメルマガでは、このことに関連して、「 『我慢すること』と『話すこと』 」というテーマで考えてみたいと思います。
本当は、ここに
- 話しをする基本姿勢
- 話しをする目的
ということを絡めて、一つのまとまった話にしたいと考えていましたが、イマイチ整理できなかったので、見送りました。
大雑把に書くと次のようなことです。
【話をする目的】
- 自分の気を済ませるため
- 伝えたいことを相手に伝えるため
【話をする基本姿勢】
- 話を終わらせて、一人に戻ろうとする
- 話を続かせて、時間を共有しようとする
整理できれば、別途、メルマガかホームページでご紹介したいと思います・・・。
最後に、『陽の言葉』とは・・・。
- 自分の感覚を素直に話した言葉
- 自分の感情を素直に話した言葉
- 自分の望みを素直に話した言葉
相手の気持ちを自分の思い通りに変えようとせず、自分の言葉を聞いた相手の気持ちが動くことを信じていれば、それらの言葉は『陽の言葉』となるのだろうと思います。
それでは、次回のメルマガ配信をお楽しみに!
(半年以内に発行します!(苦笑))