逆転移

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心理用語に逆転移という言葉があります。

私はカウンセリングの勉強をしているとき、この逆転移の意味をなかなか理解できませんでした。

この逆転移はカウンセラーや心理療法家が意識する言葉なのですが、これに関連した書籍の中に、一般の方が心のことを理解する上でとても役立ちそうなものがあります。

今回は、その本をご紹介しようと思います。

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その前に、まず、逆転移のことを少し説明します。

※私なりの解釈が入って、一般的な解釈とは異なっているところがあるかもしれません。そういう前提でお読み下さい。

転移とは、目の前の状況に、それとは無関係な過去の経験に基づいた意味づけをしてしまうこと をいいます。

 

簡単な例を挙げると、朝学校の教室に入るとき、引き戸を開けると、頭に黒板消しが落ちてくることがしばらく続くことを想像してみて下さい。

すると、黒板消しが仕掛けられなくなっても、しばらくは教室の引き戸を開けるときに、何となく嫌な感じがして上の部分が気になってしまうと思います。

これは過去の経験によって、黒板消しが仕掛けられているような予感を感じるようになってしまうためです。

もう少し例を挙げておきます。

 

【例1】

口ひげを生やした人は、自分に厳しくするような感じがして苦手だ

[考えられる背景の例]

  • 子供の頃、父親は口ひげを生やしていた
  • 少しでも失敗すると、父親に延々と責め立てられた
  • そんな経験を繰り返したことにより、無意識の中に「口ひげをはやした男」=「自分を責め立てる」という関連付けができてしまった
  • もともとは父親に対する苦手意識だったものが、「口ひげ」を見ることによって、「自分を責め立てる父親」を想起される(目の前の無関係な人に、過去の経験を映し出してしまう)
  • 漠然と「何か失敗したら責め立てられそうな感じがして、口ひげを生やした人を好きになれない

 

【例2】

「どうして?」と質問されると、なぜか怒りの感覚が生じてしまったり、言いたいことがあっても何も言えなくなってしまったりする

[考えられる背景の例]

  • 子供の頃、母親は、何でも自分の思い通りにしないと、「どうして、お母さんの言う通りにしないの!?」と自分を責められた
  • 「どうして?」を文字通り質問と受けとめて自分の考えを話すと、「口答えをするのか!?」と責められた
  • これも質問なので、「口答えじゃないよ」と答えると、「それが口答えなんだよ!」と責められた
  • そんな感じで、質問に対して自分の思うことを言うと、状況は余計に悪化した
  • ところが何も言わないでいると「黙ってないで何とか言いなさい!」と責められた
  • しかし、何か答えるよりは、黙っている方が、母親の気が済み開放されるまでの所要時間が短くて済むところがあった

そんな経験の繰り返しによって、無意識の中に、次のような関連付けができてしまいます。

  • 「どうして?」 = 「自分を責める言葉」
  • 「どうして?」 = 「母親が自分を責めはじめるきっかけの言葉」
  • 「自分の気持ちを言う」 = 「母親の怒りが増幅する」
  • 「黙って言わせておく」 = 「相手の怒りが早く納まる」

「どうして?」という他意のないただの質問なのに、無意識の中にできたこれらの関連付けによって、「相手に怒りの気持ち(幻の気持ち)があると無意識に感じてしまいます。

その結果、

  • 相手の怒り(自分が勝手に感じた幻の気持ち)に対する防御の意味で自分も戦闘モード(怒り)に落ちってしまう
  • 責めが延々と続くこと(過去の日常)から自分を守るために何も言わなく(何も言えなく)なってしまう

と考えることができます。

 

 

カウンセリングの勉強をしているときには、

  • 相談者がカウンセラーに対して起こすと転移
  • カウンセラーが相談者に対して起こす転移逆転移

と呼ぶと習った(と思うのですが・・・)のですが、イマイチよく分かりませんでした。

 

  • なぜ、カウンセラーに起こる転移逆転移なんて別の呼び方をするのだろう?
  • 「カウンセラーは特別の存在だ」と考えているから、特別な表現を使っているの?

 

おまけに、カウンセリングを学ぶ中で、

  • 逆転移は、カウンセリングに活用することができる

などと習って、ますます混乱したことを思い出します。

 

結論からいうと、前述したような転移

  • 相談者に起こっても、カウンセラーに起こっても、転移転移である

ということです。

 

で、逆転移とは、

  • 目の前の相談者転移による感情を体験しているとき、
  • そのような状態の相談者とのやり取りによって、カウンセラーに何らかの感情や感覚が生じること

をいい、更に、次のような条件がつきます。

  • このとき、カウンセラーに生じる感情「今ここ」で感じるものであること(カウンセラー自身の転移による感情ではないこと

つまり、相談者の状態に関わらず、カウンセラーが転移を起こしていれば、それは転移であって逆転移ではないということです。

 

ですから、カウンセラーが逆転移を活用するためには、次のような能力技術を身につけている必要があります。

  • カウンセラー自身に生じる転移について熟知していること
  • カウンセラー自身に生じている感情や感覚が、今ここでの感情転移感情かを区別できること
  • 仮に転移感情が生じていた場合、それを自覚し、自動反応を抑え、意図的な反応としてコントロールできること

 

精神分析の世界では、精神分析医になるためには、精神分析医を目指す人が、教育分析というものを何年にも渡って何度も何度も受けなければならないと聞いたことがあります。

その辺のことを詳しく勉強した訳ではないのですが、その目的は、「他人の精神分析ができるようになるため」というよりは、「自分自身の転移反応を把握するため」と、今は理解しています。

そうやって、自分に生じる転移としつこくきちんと向き合うから、精神分析医は、「逆転移を活用する」と言う資格を持てるのだと思います。

逆に、カウンセラーが自分の転移感情ときちんと向き合っていない場合は、安易に『逆転移を活用する』などと考えるのは危険だと思います。

 

 

そもそも、カウンセラーは自分の転移反応を、しっかりと自覚し把握しておく必要があります。

 

カウンセリングの大切な目的として、

  • 相談者がカウンセラーとの対話を通して、正常なコミュニケーションを繰り返し体験する

ということがあると考えています。

 

正常なコミュニケーションとは、転移反応をあまり身につけていない人との間で行なわれる「今ここでの体験」を中心にしたコミュニケーションです。

 

そんなコミュニケーションを繰り返し体験することによって、次のような変化が起こると期待されます。

  • 相談者が、自分に独特の転移反応に気付き
  • 転移反応を起こさなくても問題が生じないコミュニケーションに慣れ
  • その慣れによって、自分や他人を苦しめたコミュニケーションのパターンや反応が薄れ
  • コミュニケーションが次第に正常化し
  • 複雑な人間関係の中でも、自分らしさを保ち、望みを実現できる自分に変化していく

 

しかし、相談者の「一般的な普通の反応」にカウンセラーが転移を起こし反応してしまったり、相談者の転移反応にカウンセラーが更に転移反応を起こしてしまったりしていては、相談者のコミュニケーションをより混乱させることはあっても、正常化の助けになるとは期待できません

 

ということで・・・・

ものすごく前置きが長くなってしまいましたが、今回の投稿の目的の書籍の紹介をします。

ありがちな心理療法の失敗例101
―もしかして、逆転移?

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ころんで学ぶ心理療法
―初心者のための逆転移入門

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これらはカウンセラー向けの本なのですが、心の動きを理解するには、とても良い本だと思いました。

特に、「ありがちな心理療法の失敗例101―もしかして、逆転移?」の方は、事例がたくさん載っていたので、参考になりました。しかも、1つ1つの事例の説明が長くないので、読み進めやすいです。

(「ころんで学ぶ心理療法―初心者のための逆転移入門 」の方は、ちょっと印象に残っていませんが、本のことを覚えていたので、それなりに参考になったような気はします・・・(苦笑))

 

書籍の中では特に触れられていませんが、「ありがちな心理療法の失敗例101―もしかして、逆転移?」を読んでいるうちに

  • 人格障害という少し怖そうな呼び方をされる状態も、実は、過去の経験による学習によって、余計な転移反応(条件反射)が、人よりも少し強めに身についてしまっただけ

ということが理解できると思います。そう理解できると、解決の方向性も見えてくると思います。

 

【参考】
転移と投影については、次のページでも、私なりの解釈を詳しく説明しています。もし、興味のある方はご覧下さい。精神分析的な解説ピュアハート・カウンセリング
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