ソチ・オリンピックでは、色々な感動がありました。
中でも、私は、フィギュアスケートの浅田真央ちゃんのフリーの演技後の様子に感動しました。
あの場面を見て、涙を流した人は、多いと思います。
その後、NHKの番組で、お姉ちゃんの浅田舞ちゃんが、真央ちゃんへの思いを語っていたのを見て、また、泣いてしまいました。
もう一度、お姉ちゃんが話しているところをみたいと思って、YouTubeを探したら、動画がアップされていたので、ご紹介します。
( → 動画が削除されていました。音声がアップされていたので差し替えました。2020/02/20)
このお姉ちゃんの話を聴き、様子を見ていて感じたことを書きます。
浅田舞ちゃんは、真央ちゃんにとって、
- つらい思いになったときや、嬉しい気持ちになったときには、それに至った経緯を理解し、その気持ちを推し量ってくれる存在
といえると思います。
人は、何らかの感情が生じているとき、意識している感情の他に、多くの場合、「もう一つのこと」を感じています。
それは、
- 『その感情を生じている自分』が、周りの人にどのように扱われるか?
といった予感(雰囲気)のような感覚です。
感情には、この「もう一つのこと」がつきまとっていることが多いです。
例えば、コップを倒して水浸しにしたとき、怒られそうに感じるような感覚です。
「自分のことを理解して肯定してくれる」という感覚が強ければ、
自分が周りの人の気持ちを、そんなに考える必要はなく、主に、自分の感情に向き合って、自分の気持ちを満足させられるように、自分を導いていくことができます。
コップの例では、例えば、「十分慎重に扱っていたけど、コップを倒してしまった。慎重に扱っていたのに水浸しにしてしまって悲しい」ということを理解してもらえるような感じです。
目の前の事態に、的確に対応できると思います。
ところが、「自分のことは理解してもらえず、否定される」という感覚が強ければ、自分の感情よりも、
- どのようにしたら『自分のことを理解せずに否定する人』に受け入れられるか?
と考える比重が大きくなります。
コップの例では、例えば、「また、こっぴどく怒られる。どのように言い訳すれば、余り怒られずに済むだろうか」と考える感じです。
余計なことばかり考えて、目の前の事態への対処が疎かになりがちです。
このように、他人の反応を考える比重が大きいときが自己否定している状態で、それは「自分の感情」を否定するところから始まります。
しかし、他の人に認められるためにあれこれやったところで、根本のところで自分の感情を否定してしまっていては、いつまで経っても自分の気持ちを満たせないということは想像できると思います。
これが、「心の苦しさから抜け出せない」、「心が満たされない」という感覚の根本にあることだと考えています。
この自分を苦しめる「予感(雰囲気)のような感覚」は、いつ頃どこで身につくのでしょう?
それは、やはり、子供の頃の家庭における親との関わりが大きく影響していると考えています。
悲しくて泣いていたら
- 心が穏やかになるまで抱きしめられた
- 泣かなくなるまで無視されたり、逆に、責められたりした
嬉しくて喜んでいたら
- 歓喜が落ち着くまで、一緒になって喜んでもらえた
- 嬉しがらなくなるまで無視されたり、批判されたりした
悲しいとき、嬉しいとき、家庭で前者のような対応が繰り返されれば、「自分に生じた感情は、理解してもらえる」という感覚が身につき、後者のような対応が繰り返されれば、「感情が生じた自分は受け入れられない」という感覚が身につくということです。
心の苦しみからなかなか解放されない人は、「感情が生じた自分は受け入れられない」という意識が強く、自分のことを温かく見守ってくれる人をイメージできないのではないでしょうか?
実は、私がそうで、つらい思いになったときや、嬉しい気持ちになったときには、それに至った経緯を理解しようとして、そして、そのときの自分の気持ちを推し量ってくれる人がいるような気がしません。
失敗したときやつらい気持ちになったときには、失敗したこと責められ、つらい気持ちになったことを責められる、そんな雰囲気を感じてしまいます。
また、自分が嬉しいときには、つまらないことで喜んでいてはいけないような感覚が生じてしまいます。
子供の頃のことを思い出せば、泣けば地下室に閉じ込められ、喜べば馬鹿にされる、そんなことの繰り返しでした。
それが影響しているのだろうと思っています。
でも、過去や親を恨んでも、何も変わりません。
では、どうしたらいいのでしょうか?
たぶん、自分のことを温かく見守ってくれる人のイメージを、簡単に想像できるようになれば良いのだと思います。
もし、自分の感情や努力などの全てを分かってくれる人がいたら、
- 悲しんでいる自分にどのようなことを言ってくれるのだろう?
- 苦しんでいる自分にどのようなことを言ってくれるのだろう?
- 喜んでいる自分にどのようなことを言ってくれるのだろう?
今は、実際に、自分のことを温かい気持ちで見守ってくれる人が見当たらなかったとしても、そのイメージが浮かぶようになれば良いのです。
イメージが浮かぶようになれば、それだけで、ずいぶん気持ちは楽になると思います。
(「イメージが変われば、現実が変わってくる」ということもあります。それについては、心の解釈の、「第3部 「心の回復」を理解するための基礎知識」「第4部 心を回復させる心理カウンセリング活用法」で説明していますので、参考にして下さい。)
で、今回、ご紹介した動画です。
今回、ご紹介した動画の舞ちゃんの話を何度も繰り返し聴くと、「自分を温かい気持ちで見守ってくれる人」をイメージするときの基礎作りになると思います。
そして、ソチ・オリンピックのショートプログラムで苦しい気持ちになっている真央ちゃんと、 自分を重ねて、舞ちゃんが真央ちゃんに語る内容を参考に、自分自身の気持ちが救われるような言葉を考え、自分自身で言う練習をしてみて下さい。
- これまでの経緯を理解する言葉
- これまでの努力(苦しさに耐えることも、立派な努力だと考えて良いと思います)に気づき、それを認める言葉
- 今の状態をいたわる言葉
「心理カウンセリング」というと、心の問題を解決することだと思う人は多いと思います。
でも、そうではないのです。
心理カウンセリングの本当の目的は、「自分の味方(この動画での舞ちゃんのような人)をイメージできるようになること」と私は考えています。
つまり、心の苦しさの原因は、「心の問題」ではなく、「自分の味方をイメージできずに、批判する人ばかりをイメージしてしまうこと」ということです。
このように考えると、心の苦しさの解決も、そんなに難しいことではないように思えてきませんか?
今回の説明を頭の片隅に起きながら、この動画を繰り返し見れば、きっと、心理カウンセリングを受けるような効果が得られるだろうと思います。
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