心を楽にするために振り返る子育て

11. 兄弟姉妹が仲が悪くなる事情

読むカウンセリング【No.0010】 2007/01/16

新年明けましておめでとうございます。

今年最初のメルマガ&半年振りのメルマガの配信となります。

楽しみにして下さっている方には、大変お待たせして申し訳ありませんでした。

こんな感じのノンビリ目の発行周期になるかもしれませんが、今後もよろしくお願いします。

最近起こった兄妹間の事件に限らず、カウンセリングを通して、兄弟姉妹との関係が悪くなってしまう状況が意外に多くあるように、感じております。

そこで、今回のメルマガでは、兄弟姉妹の仲について少し考えてみたいと思います。

兄弟姉妹が仲が悪くなる事情

人が心の苦しみを抱えている場合、その人の兄弟姉妹も、また、同じように心の苦しみを抱えていることが多いように感じています。

それは、兄弟姉妹は同じ心の傷を持っていることが多い為だと考えています。

しかし、同じ家庭で暮らす兄弟姉妹は、お互いの心の傷に気付くことが難しく、逆に、お互いがいがみ合う関係(正確に表現すれば、うらやみ合う関係)に陥りやすいところがあると考えています。

今回のメルマガでは、そのような状態に陥ってしまいがちな理由について、何となく理解して頂ければと思います。

これから書く内容は、あくまでも一つのパターンに過ぎず、心の苦しみを抱える全ての人の兄弟姉妹について正しく説明している訳ではありません。

しかし、もし、兄弟姉妹に対して心のわだかまりがあるときは、それが生じるカラクリを理解する上で、少しは参考にして頂けるのではないかと思います。

1.家庭の規制について

家庭において、そこで暮らす子供たちは、『父親の価値観』と『母親の価値観』によって、その行動や考え方が規制されます。

当たり前のことですが、第一子は、生まれてきた時に『家庭にどのような規制があるのか』ということを前もって知ることができません。

ですから、とりあえず行動して、それに対する親の反応によって判断しながら、その規制を学び取っていくしか道はありません。

子供が、夫婦のコミュニケーションを観察する機会が少なければ少ないほど、この傾向は強まるのではないかと思います。

2.親の反応について

子供が親の価値観に反する行動をしてしまったら、多くの場合、その行動は親によって否定されてしまいます。

もし、親に『相手の価値観を受容し譲歩する能力』が備わっていなかったら、子供がその行動をしなくなるまで、とことん否定し続けられるかもしれません。

このような第一子の『とりあえず行動して、その結果で学んでいく』というスタイルは、親には大きなストレスになるだろうと思います。

しかし、子供の心も、『親から否定されることに対する不快感』と『自分の思い通りに行動できない不満感』の2つの感情を感じるのです。

ところが、第二子は自分が行動しなくても、第一子と親のやりとりを観察していれば、そこにある価値観や規則を把握することが出来ます。

当然、「親に嫌われたくない」とか「嫌な思いはしたくない」という心理が働くだろうと思います。

そして、第一子と親のやり取りから学習した『親から否定される行動』はとらなくなるのは自然なことだろうと思います。

その結果、親から自分の行動を否定されることは回避できるのですが、『自分の思い通りに行動できない不満感』というものは、第一子と同じように感じるのです。

親は、自分の価値観の通りに行動する子供に対して悪い印象を持つ訳はなく、そ
の結果、衝突する子供よりも、自分に従順な子供を可愛がるようになってしまう
のは自然な傾向なのかもしれません。

そんな状況の中で、第一子と第二子は、親の評価をめぐってライバル関係に陥り、兄弟姉妹の関係性が悪化していくのだろうと思うのです。

3.兄弟姉妹に対するお互いの認識について

ここで、兄弟姉妹の状況とお互いに対する気持ちについて、少し推測してみたいと思います。

■第一子の状況

  • 親が反対する行動をすると、それを遂行することを妨げられる
  • 親と衝突することによるストレスを感じる
  • 親に賛成されないまま行動することによるストレスを感じる

【第二子から見れば・・・】

  • 親の言いなりにならず、自分の言いたいことを自由に主張し、自分のしたいように行動しているような印象を受ける

■第二子の状況

  • 親が否定しそうなことは、自己規制している
  • 親から可愛がられる
  • 自己規制していることを本人が意識できていないことも多く、理由の分からない漠然とした不満感にさいなまれていることがある

【第一子から見れば・・・】

  • 「好きなことをやっても親から否定されない」という印象を受ける
  • 自分よりも親から可愛がられているような印象を受ける

4.我慢とその方法の違いについて

もちろん、これまで説明してきたように、必ずしも兄弟姉妹がいがみ合う状況に陥るとは限りません。第一子は第二子に同情し守りたいという気持ちになることもあると思いますし、逆に、第二子は第一子に同情し助けたいという気持ちになることもあるだろうと思います。

しかし、そのような場合でも、お互いの理解を深める為、また、自分自身の理解を深める為に、是非とも認識しておいていただきたいことがあります。それは、親の価値観に合わないことは我慢する事になっているということです。我慢の方法には、第一子は、『主張したり行動した結果、それを否定され、我慢させられる』、第二子は、『主張せず、学習した規則に従い我慢している』というような違いはあるかもしれませんが、我慢しているというところは同じなのです。

この我慢の仕方の違いによって、兄弟姉妹が、お互いが同じように我慢しているということに気付き難くなってしまうのだろうと思います。

繰り返しになるかもしれませんが、同じ家庭で暮らす兄弟姉妹は、親からの評価とは関係なく、親から同じ価値観が植え付けられ、自分の本来の望みを我慢する状況に陥ってしまい易いのです。

5.最後に

今回の説明は、ひとつの側面からの説明です。

実際には、ここに、夫婦間のコミュニケーション、父親とのコミュニケーション、その他様々な要因が関わってきます。

それらの相違によって、第一子や第二子の子供の役割が入れ替わる事もあるだろうと思いますが、そこまで説明しようとすると、あまりにも複雑になりすぎてしまうので、今回は省略しました。

この文章が、『兄弟姉妹は、同じ我慢を強いられた同士である』ということに気付き、お互いの理解を深めるきっかけにして頂けることを願っています。

メルマガ編集後記【No.0010】

約半年振りに、メルマガ「読むカウンセリング」を発行しました。

直接のきっかけは、メルマガを発行しているmag2の方から、「半年以上メルマガを発行しないと廃刊する」という警告のメールを受け取ったことです。

長期に渡ってメルマガの発行をサボってしまったのは、前回のメルマガ【No.0009】の内容は、『答えそのもの』と思えてしまっ て、それ以上何を書いて良いのか分からなくなってしまったからなのですが、最近、ニュースで報道されている兄妹の悲しい事件や、カウンセリングで兄弟に悪い印象を持つ人があまりにも多いことから、今回のメルマガの内容を書いてみようと思い、半年振りにメルマガを発行するに至りました。

メルマガ『読むカウンセリング【No.0010】 兄弟姉妹が仲が悪くなる事情』では、一例として、第一子・第二子とに区別して説明させて頂きましたが、現実はそんなことで単純に切り分けできるものではないと思います。

もしかしたら、次の切り口で説明した方が分かりやすかったかもしれないと思ったりもしています。

■親の矛先が誰に向いていたか?

(「誰にどんな矛先を向けていたか?」という表現の方が正確かもしれませんが・・・)

矛先を向けられた子供は、反発しながら我慢しているような状態に陥り、矛先を向けられていない子供は、その様子から学び取り、行動する前に我慢する状態に陥るということなのだろうと思います。

親の矛先はどこに向くのでしょうか?

  • 同性の子供と異性の子供
  • 男女の違い
  • 年上・年下の違い
  • 親の好み

など、他にもさまざまな要因があると思います。

それらに

  • 親の心配・不安
  • 親の期待
  • 親自身のの失敗体験・成功体験
  • 親の世界観・価値観

などが絡み合って、一人の子供に矛先が向く場合もあれば、切り口の違いによって、あっちこっちに矛先が向く場合もあるだろうと思います。

しかし、様々な矛先が様々な人を巡っていても、『矛先を向けられた時は反発しながら我慢し、矛先を向けられていない時はそれを見て学び取り我慢する』、つまり、『結局、我慢する』というところに納まらざるを得ないのだろうという気がしています。

そこに、メルマガで書きましたが、親の愛情という評価が偏ると、兄弟姉妹の仲がこじれ出すのだろうと思います。

ここで重要な事は、子供が感じ取る親の愛情の兄弟に対する割り合いによるということです。

親の愛情が実際に偏っていたのかもしれません。

また、親は同じように接しているつもりでも、子供が受け取る感じが違っていたのかもしれません。

そんな状況で、同じように愛されるべき兄弟姉妹のみんなが、

■それぞれが、同じような事を、それぞれの方法で我慢してきた

ということを理解し合うことが出来れば、きっと、これまでとは違う関係になれるのではないかと想像するのです。

【子育て中の親御さんにアドバイスするとしたら・・・】

兄弟姉妹の仲を改善しようと思うときは、兄弟姉妹を仲良くさせるという考えは脇に置いても良いのかもしれません。

そして、親の「子供たちに同じように接している」という主観も脇に置いておいて、子供の主観を確認し、「子供が足りない」と言えば、どうして欲しいのかを子供に確認し、そのことで補ってあげることを意識して実践すると良いのかもしれません。

【余談ですが・・・】

子供にとっては、兄弟みんな同じ子供という認識だと思うのですが、親は、「みんな同じようにただの子供だ」ということを忘れて、第一子に対して、第 二子以降の子供たちよりも色々な事ができるはず、いわゆる『お兄ちゃんだからちゃんとしなさい』・『お姉ちゃんだから我慢しなさい』というような感覚に陥ってしまいやすいような気がします。

たかだか数才の違いなのに、お兄ちゃんやお姉ちゃんという役割を、幼い頃から一生背負わされるのは理不尽なことのような気がして、わが家では、『お兄ちゃん』という言葉は使わないということを試しています。

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